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加入の厚生年金基金脱退認める判決 長野地裁

投稿日時: 2012-08-27 10:57:09 (1426 ヒット)

以下、引用です。

 県建設業厚生年金基金(長野市)に加入する昌栄土建興業(諏訪郡原村)が、同基金の財政悪化などを理由に基金からの脱退を求めた訴訟で、長野地裁(山本剛史裁判長)は24日午後、脱退を認める判決を言い渡した。

厚生年金基金(厚年基金)からの「脱退の自由」をめぐる判決は厚生労働省なども把握しておらず、異例の司法判断。全国では、ことし2月に発覚したAIJ投資顧問(東京)による年金資産消失事件を機に基金からの脱退や基金の解散を検討する動きが広がっており、影響を与えそうだ。

県建設業厚年基金では2010年に20億円を超える使途不明金(その後23億8700万円余と判明)が発覚、行方不明となった当時の事務長が業務上横領容疑で指名手配されている。

 こうした事態を背景に昌栄土建興業は11年1月、「基金の将来に全く期待できなくなった」として、脱退に必要な1千万円以上の負担金を支払う意向も示し、脱退を申し出た。しかし、同基金代議員会は「不承認」と議決。民事調停でも折り合わず、同社が11年6月に提訴した。

原告側は、負担金の支払いなど厚生年金保険法が定める条件を満たせば脱退は認められるべきだと主張。これに対し被告の基金側は、厚年基金制度は加入企業が協力して運営する仕組みで「脱退が相次げば存続できない」とし、基金を維持するために代議員会は脱退を制限できると反論していた。

 また、原告側は、「民法上の組合」では、脱退の自由を制限する契約は無効とする最高裁判例があると指摘。被告側は、厚年基金には公的な性格があり、「民法上の組合」の判例は当てはまらないとし、見解が対立していた。

 判決は、基金は公的な性格を持つことから基金存続を図るために事業所の脱退に一定の制限をすること自体は「合理性がある」とする一方、「やむを得ない事由がある場合には、脱退に代議員会の議決または承認は不要である」と指摘。

 県建設業厚年基金について多額の不明金が出ていることや、事務長が行方不明となり指名手配されるなどしていることから「運営方法について重大な疑義があり、基金の存続が危ぶまれている状況にあると言わざるを得ない」とし、「原告が基金に対して信を置くことができないと判断しても無理はなく、脱退することにやむを得ない事由がある」と結論付けた。

(8月24日 毎日新聞)