パイロット他社へ転職なら「教育訓練費返還を」 スカイマーク 提訴
以下、引用です。
国内航空3位のスカイマークが、他社へ転職する複数のパイロットに、社内での「教育訓練費」約400万円を返すよう求めていることがわかった。一部で裁判にも発展し、パイロット側は「労働基準法違反だ」と反発する。パイロット不足の中、引き抜き防止策の一環とみる関係者もいる。
■会社側提訴にパイロット反発
約400万円の返還を求められた20代の男性パイロットが朝日新聞の取材に応じた。副操縦士から5年で機長になる予定が、想定より乗務の割り当てが少なく、所定時間に達するのに8年かかる見通しとなり、「早くキャリアアップしたい」と転職を決意。入社当日、返還を承諾する覚書に署名したが、「大量退職を防ぐためで深い意味はない」と説明されたと話す。
関係者の話を総合すると、同社では少なくとも10人前後のパイロットが、返還を求められている。
「教育訓練費」とは何か。航空会社のパイロットは操縦士の国家資格に加え、機種ごとに国のライセンスがいる。さらに各社ごとに社内訓練があり、副操縦士になるには社内の審査、機長になるには国の審査に合格する必要がある。それぞれ一定の飛行時間も求められる。
スカイマークが訴えている裁判の記録によると、国家資格を持って2011年に入社した40代の男性パイロットは、7カ月の社内訓練でボーイング737型機のライセンスを取り、副操縦士の審査に合格。同8月の人事発令で副操縦士の乗務を始めた。さらに訓練を受けて国の機長審査に受かり、13年8月には機長に昇格。だが14年2月に退職し、国内の別の航空会社に移った。
同年4月、スカイマークは、副操縦士の人事発令から3年以内に自己都合で退職した場合は教育訓練費を請求する、と定めた就業規則などに基づき、男性に約407万円を返すよう求めて東京地裁に提訴した。
「B737型機の機長資格を得たことにより、同型機を使う転職先での訓練期間を半分以下にでき、男性の利益は大きい」と指摘。法的には、入社時に教育訓練費の貸し借りや立て替え契約が結ばれたのが実態で、3年間の勤務で返還が免除されるにすぎないと訴える。社内訓練や審査費用のほか、訓練機の燃料代や訓練地までの交通費も請求した。タクシー会社の研修生が、会社の負担で2種免許を取った後に退職したケースの訴訟で、「免許は退職後も使え、本来個人が負担するべきだ」として、会社の返還請求を認めた判例があるとも主張する。
一方、男性側は「副操縦士の訓練生として雇用され、訓練は勤務そのもの。業務上命じられた訓練の実費は会社が負担すべきだ」と反論。請求は転職の自由を奪い、労基法違反だと訴える。逆に、海外研修先の関連企業で業務をさせた社員に研修費の返還を求めた訴訟で、請求を認めなかった判例があるとしている。
スカイマーク広報は取材に「係争中なので一切コメントできない」、国交省は「会社と雇用される人の契約の問題で、司法の判断を見守りたい」としている。
(1月12日 朝日新聞)
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